Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【タルムード】メロディーを買った青年

内容

ある村に裕福な家庭に育った娘がいた。娘の両親は熱心なユダヤ教徒だった。結婚適齢期になったので、娘の両親は良い婿がいないかと探していた。

隣町に、裕福ではないが真面目できちんとした両親に育てられた青年がいた。その青年はヘブライ聖書をしっかり勉強し、毎日シナゴーグに通うユダヤの若者であった。

娘の両親も青年を気に入り、結婚話がまとまった。娘の両親はその青年に結婚式の道具を市場で買うための支度金を与えた。青年は買い出しのために市場に向かった。

市場に行く途中の道で、美しいメロディが聞こえてきた。どこから聞こえてくるかと行ってみると、羊飼いの牧童がハープを奏でていた。青年は「そのメロディを教えてください」と牧童に頼んだ。その牧童は「100シュケルくだされば教えましょう。」と言った。100シュケルは大金だったが、青年はお金を払ってそのメロディを買った。

その後市場で買い物をしようとしたところ、青年は先ほど買ったメロディを忘れていることに気がついた。青年は引き返して、牧童に「もう一度教えてください」と頼み込んだ。牧童は「いいですよ、100シュケルです。」と言ったので、また100シュケル払ってメロディを買った。

買い物の帰り道で今度はまた別のメロディが聞こえてきた。同じ牧童が奏でていた。同じ曲に続きがあったのである。そこで青年は牧童に「さっきの曲の続きを教えてくださいますか?」と頼んだ。ところが青年は買い物でお金を全部使ってしまったことに気づいた。

そこで青年は「じゃあ100シュケルの代わりに私が買った婚礼の道具を差し上げます。」と言うと、牧童は「いいですよ。」と言って曲の続きを教えてくれた。

婚約者の家に戻ると、娘の両親は「どんなものを買ったのかい?」と青年に聞いた。

青年はメロディを買うためにお金を使い果たしてしまい、家財道具は買っていないと説明すると、婚約者の両親は怒るどころか、「それでこそ娘の結婚相手に相応しい」と大いに褒め称えた。

青年はそのメロディを演奏し、また、多くの人にも教え、その曲で多くの人が幸福な気持ちになった。

そうして年月が過ぎ、青年も年をとって、天国に召されたところ、なんと天国でそのメロディが奏でられていた。青年の魂は最高の安らぎを与えられることになった。

 

「形のないもの」に目を向ける

知的価値は物的価値に優る。

この話のメロディは、音楽・美術・演劇・バレエなどの文化芸術活動や学問を例えたもの。知的・精神的活動は金銭や道具などの物質的なものよりも価値があることを示している。

無形資産を購入することは有益な投資である。

1回買っただけで、何度でも売ることができる。忘れない限りなくなることもない。

本当のチャンスには犠牲を払ってでも行動して手に入れる。

旅の途中で故郷の人が知らないような本に出会ったら、必ずその本を買い求め、故郷に持ち帰りなさい。

説得力やプレゼン力も必要となる。