Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【タルムード】兵士とパスポート

内容

北部アフリカのエチオピアユダヤ人がいました。1980年代末、エチオピアの軍事政権は国内のユダヤ人を捕え刑務所に放り込んでいました。殺害はされなかったものの、食べ物は与えられず餓死の危険がありました。

捕えられた1人にラビがいました。この人は監視の隙を見て逃げ出しました。その日は農家の小屋に隠れ、夜暗くなってから国境に向かって歩き出しました。日が昇る前に隠れ、深夜に灯りのない道を歩くことを何日か繰り返しました。やっと収容所からかなり離れたので、国境方向に行くバスに乗って時間と距離を稼ぐことにしました。

ところが、途中の検問所でバスが止められ、兵士が2人乗り込んできて、マシンガンを抱えながら「全員パスポートまたは身分証明書を見せろ。手に持って頭上に差し出せ。」と大声で怒鳴りました。

このラビは何も持たずに脱走したので、もちろんパスポートも身分証明書も持っていません。兵士は前席の乗客から順番にパスポートと顔をチェックし、徐々にラビの席まで近づいていきます。この様子だとあと2~3分しか猶予はありません。パスポートも身分証明書も持っていないユダヤ人が社外へと連行されて行きました。「なくしました。」は通用しないようです。

ラビはニコニコしながらゆっくり立ち上がると、周囲にいる席の者たちからパスポートを集めました。「ひとりひとりチェックしていては兵隊さんが大変ですから、今から皆さんのパスポートを集めます。どうかご協力ください。」と、表面上はにこやかに、しかし有無を言わせず、他の乗客からパスポートを集め、十数名分集めると兵士の1人に差し出して言います。

「1人ずつチェックしていたら大変でしょうから、この席からうしろにいる乗客のパスポートを私含めて全員分集めておきました。まとめてチェックをお願いします。」

思わぬ”協力者”の出現に少し調子が狂ったのか、あるいはパスポートのかたまりにうんざりしたのか、その兵士は十数名分のパスポートにざっと目を通したフリをすると「よろしい。」とラビに伝えました。

「それではパスポートはみなさんに返しておきますね。」こうして、ラビは逮捕を免れ、バスも無事にエチオピア国外へ脱出できたということです。

 

どんな状況でも道は開ける

最後まであきらめない根性と機転が数々の苦難を乗り越えてきたユダヤ人の哲学。

子どもの頃から物事に対して考える力を見につけてきたからこそ、とっさの判断で行動できる。

これからの世の中はより多くを考えた者が成功をつかみ、そして生き残っていく時代になる。