Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【アンデルセン童話】 父さんのすることに間違いなし

 

内容

さて、ある田舎外れに、田舎の農家がありました。そこには百姓の父さんと、母さんが住んでいました。この二人は持ち物は少ししかありませんでしたが、唯一、余分なものがありました。それは馬です。

百姓の父さんは、馬を売るか、夫婦にもっと役に立つものに、取り替えたほうがいいと思いつきました。

母さんは父さんにこう言いました。

「今日は町に市が立つ日だわ。そこに行って馬を売ってお金にするか、それとも何かいいものと取り替えてきたらどう?あなたのすることならいつだってなんだって間違いないもの。さあ市に行ってらっしゃい」と言いながら、父さんにキスをしました。

そして父さんは、売るか交換するか悩みながら、馬に乗って市に出かけていきました。

父さんは、市につく前に、雌牛を引く一人の男に出会いました。そしてこの雌牛なら、たくさんの牛乳を出してくれると思い、その男に掛け合って、馬と雌牛を交換しました。

これで父さんは仕事を終えたことになります。しかし、見るだけと思いながら、雌牛を連れて市に向かいました。

父さんは、この市で、出会った様々な動物に感心し、交換に交換を重ねます。雌牛は羊になり羊はガチョウになり、ガチョウはメンドリになりました。

父さんは、市についてからもうたくさんの仕事をしたので、くたくたでした。そこでお酒を一杯飲もうと思って、居酒屋に入ろうとすると、豚の餌用にたくさんの腐ったりんごを運んでいる男に出会いました。

すると父さんは、去年、我が家の泥炭小屋のそばの林檎の木に、実が一つしかならなかったことを思い出しました。

その一つの林檎を母さんは、取って置かなければと思い、タンスの上に腐るまで置かれました。母さんは「これが豊かさというもんだ」と言っていました。

この沢山の林檎を持って帰れば、母さんが喜ぶと思った父さんは、メンドリと腐った林檎を交換してしまいました。そして居酒屋に入りました。

居酒屋に入ると父さんは、ストーブに火が入っているのも知らず、ストーブの上に腐った林檎を置いてしまいました。林檎は「ジューッ、ジューッ、ジューッ」と音を立て始めました。

ところで、この居酒屋には、馬の仲買人、家畜売買人、ポケットが金貨ではちきれそうな二人のイギリス人の金持ちがいました。

居酒屋の皆が、林檎の焼ける音を聞くと、‘あの音は何だ!’と声を上げました。そこでそこにいた全員が、父さんの馬が腐った林檎に変わるまでのいきさつを聞くことになりました。

イギリス人は父さんに「お前さんは、おかみさんにこっぴどく叱られて、傷だらけになるだろうね」と言いました。しかし父さんは「傷じゃなくキスがもらえるよ」と断言しました。

そして父さんは、母さんがいつものように「父さんがすることに間違い無し」というだろうと、皆に話しました。

するとイギリス人は賭けをしようといい出しました。イギリス人は、金貨百ポンドかけるといいますが、父さんは金貨一升分でいいといいました。それに対して父さんは、賭けしろが、林檎しかないので、それに合わせて、自分自身と母さんをつけるといいました。それならお釣りが来るだろうと思ってのことです。賭けは成立しました。

こうして宿屋の主人の馬車が持ち出されて、二人のイギリス人と父さんは、母さんの待つ家に向かいました。

父さんは、家につくと、母さんに「馬を取り替えてきたよ」と言いました。すると、母さんは「あんたのすることは間違いないからね!」と言いながら、父さんを強く抱きしめました。

それから父さんは、馬が腐った林檎に変わるまでのいきさつを母さんに話しました。それぞれの交換に母さんは感心して、全てを話し終えると母さんは、父さんにキスをしました。

二人のイギリス人は「これは素敵な夫婦だ!一見、底の見えない下り坂の人生のはずなのに、この夫婦は何て幸福なんだ。この夫婦は、相当の値打ちものだ!」と叫びました。彼らは賭けに負け、ふたりのイギリス人は大升いっぱいの金貨を夫婦に払いました。