Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【タルムード】エデンの園の果物、アノーナ

内容

むかし、オフィールの国に、アノンと言う名の若者がいた。アノンは好奇心が強くて、空想にふけってばかりいた。

ある夕べのことだった。アノンは村の広場の石造りのベンチに腰を下ろして、村の長老から話を聞いた。エデンの園と、そこにあるふしぎな知恵の木についてで、その木の果実を口にした者は、誰でも神の知恵を授かる、と言う話だった。

「で、その知恵の木の実と言うのは、どういうかたちをしているんですか?」アノンは気をそそられて、長老にたずねた。

「だれもはっきりとは知らんのだ。だが、松ぼっくりのようなかたちをしていると言う者もいる」長老はいった。

「今すぐ、探しに行きます!」アノンは叫んで立ちあがった。「エデンの園を見つけるまでは、じっとなんかしていられません。知恵の木の実を口にして、最高の知恵者になるまで、ひと休みもしません!」

つぎの日の朝、アノンは早起きして両親に別れをつげ、食糧を持って、エデンの園を探す旅にでた。何日も何日も、あのさまよい歩いた。山をのぼり、谷をくだり、川をわたり、沼地をこえ、そして、とうとう、目のとどくかぎりどこまでも果てしなくつづく大きな石壁にたどり着いた。石壁の向こうから、さわやかな木々の香りや、芳しい果物の匂いがただよってきた。

「ああ、神様!」アノンは心のうちでつぶやいた。「こここそ、エデンの園にちがいない。やっとたどり着いたぞ」

アノンが入り口をさがして石壁づたいに歩いていると、いたずら好きの小鬼が、石壁のすきまから顔を出して、アノンを見つけた。

「この人間と、ついでにエデンの園の番人を、ちょっとからかってやろう」小鬼はひとりごちた。

小鬼が手を差し伸べると、とつぜん、石壁に細い亀裂ができた。アノンは亀裂を見つけると、腹ばいでもぐって進み、エデンの園に入り込んだ。立ち上がって歩き出したアノンの目の前に、いきなり、今まで見たことのない木が現れた。さほど高くない木で、枝にいくつも実がなっている。りんごくらいの大きさの黄緑色の実で松かさみたいなかたちをしている。

アノンはすぐ、村の長老の「松ぼっくりのようなかたち」ということばを思い出した。「これこそ、知恵の木の実だ!」アノンはうれしくなった。そして、ためらうことなく、実をひとつもいで、たてに割った。実はみかんのように房状になっていて、白い果肉のあちこちに黒い小さな種が散らばっている。なんともいえない、いい香りがした。アノンは好奇心ではち切れそうだった。

「さぁ、好みを味わってみよう!」

果肉をひと口かじると、この世のものとも思われない味が身体中に広がっていく。品のよい、ほど良い甘さで、その果物に祝福されている気分になった。アノンは黒い種を吐きだすと懐にしまい込み、また新しい房にかぶりついた。

いきなり、雷のような大声が上のほうからひびいてきた。

「人間よ、ここで、何をしておる!」

目をあげたアノンは頭上で剣をゆらしているエデンの園の番人に気づいた。

「この素晴らしい実を味わっています」アノンは無邪気に答えた。「おたずねしますが、この実は

だが、アノンがたずねおわらぬうちに、番人は足を上げた。アノンはポーンと空高く蹴飛ばされ、エデンの園の石壁を越え、はるかかなたの、荒れはてた山あいの川のほとりに転がり落ちた。アノンは、そこに小屋を立てた。

はたして、アノンが口にしたのは「知恵の木の実」だったかどうかは、わからない。だれにも知りようがない。だがアノンは、あの、えもいわれぬエデンの園の果実の味を、ずっと忘れなかった。

アノンはしまいこんだ小さな黒い種を川のほとりにまいた。芽が出て葉がつき、育った木は実をつけた。アノンはその実に自分の名をつけた。

そう、それが、あらゆる果物中で王者の味をもつといわれる、アノーナなのだ。

 

 

 

 

 

アノーナという名前の果物は初めて聞いた。ナツメヤシもそうだけど、ユダヤの話に出てくる果物はどれもおいしそうに書かれている。ナツメヤシの実のデーツは気に入って、だいたい毎日食べるようになった。

自分が欲しいと思ったものを、人を頼らずに自力で努力して探して、ちゃんと手入れをして実がなるまで育てあげるところが大事だなと思う。

果物を育てるみたいに、技術を磨いたり、心を磨くのは時間もかかるし力もいる。これをいかに継続していくか、実践力が大事という話だと思った。