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行動は言葉よりも雄弁

【チェコの昔話】オンドリとメンドリのお話

あるところに、オンドリとメンドリがいました。

ある日、オンドリとメンドリは、くるみを探して林へでかけていきました。

オンドリは、「えさを見つけたら、半分にわけよう」と、いいました。

「そうしましょう」と、メンドリは答えました。

メンドリは、地面を何度もつついて、くるみの実をほりだしました。メンドリは、約束したとおり、くるみの実を半分、オンドリにわけてやりました。

こんどはオンドリが、くるみを見つけました。ところが、オンドリはけちんぼうだったので、わけるのがおしくなり、メンドリにないしょで、くるみをひと飲みにしようとしました。すると、くるみがのどに、つかえてしまったのです。

オンドリは、くるしそうにいいました。

「メンドリさん、いそいで水をもらってきて!さもないと死んじゃうよ」

そのとたん、オンドリは地面にひっくりかえって、足は上をむいてしまいました。

「まあ、たいへん!」とメンドリは、水をもらいに泉へ走っていきました。

 

「ねえ、泉さん、泉さん、

お願い、水をくださいな。

わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、泉はいいました。

「したて屋にスカーフをもらってきたら、水をあげよう」

 

メンドリは、したて屋へ走りました。

「ねえ、したて屋さん、したて屋さん、

お願い、スカーフをくださいな。泉さんに持っていけば水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、したて屋はいいました。

「くつ屋にうわばきをもらってきたら、スカーフをあげよう」

 

メンドリは、くつ屋へ走りました。

「ねえ、くつ屋さん、くつ屋さん、

お願い、うわばきをくださいな。したて屋さんに持っていけば、スカーフをくれます。

そのスカーフを、泉さんに持っていけば、水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、くつ屋はいいました。

「ブタにかたい毛をもらってきたら、うわばきをあげよう」

 

メンドリはブタのところへ走りました。

「ねえ、ブタさん、ブタさん、

お願い、かたい毛をくださいな。くつ屋さんに持っていけば、うわばきをくれます。

そのうわばきを、したて屋さんに持っていけば、スカーフをくれ、

そのスカーフを、泉さんに持っていけば、水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、ブタはいいました。

「ビールを作る親方に、おいしいビールの粕をもらってきたら、かたい毛をあげよう」

 

メンドリは、ビールを作る親方のところへ走りました。

「ねえ、ビールを作る親方、ビールを作る親方、

お願い、おいしいビールの粕をくださいな。ブタさんに持っていけば、かたい毛をくれます。

そのかたい毛を、くつ屋さんに持っていけば、うわばきをくれ、

そのうわばきを、したて屋さんに持っていけば、スカーフをくれ、

そのスカーフを、泉さんに持っていけば、水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、親方はいいました。

「雌牛に生クリームをもらってきたら、おいしいビールの粕をあげよう」

 

メンドリは、雌牛のところへ走りました。

「ねえ、雌牛さん、雌牛さん、

お願い、生クリームをくださいな。ビールを作る親方に持っていけば、おいしいビールの粕をくれます。

そのおいしいビールの粕を、ブタさんに持っていけば、かたい毛をくれ、

そのかたい毛を、くつ屋さんに持っていけば、うわばきをくれ、

そのうわばきを、したて屋さんに持っていけば、スカーフをくれ、

そのスカーフを、泉さんに持っていけば、水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、雌牛はいいました。

「原っぱに行って草をもってきたら、生クリームをあげよう」

 

メンドリは原っぱへ走りました。

「ねえ、原っぱさん、原っぱさん、

お願い、草をくださいな。雌牛さんに持っていけば、生クリームをくれます。

その生クリームを、ビールを作る親方に持っていけば、おいしいビールの粕をくれ、

そのおいしいビールの粕を、ブタさんに持っていけば、かたい毛をくれ、

そのかたい毛を、くつ屋さんに持っていけば、うわばきをくれ、

そのうわばきを、したて屋さんに持っていけば、スカーフをくれ、

そのスカーフを、泉さんに持っていけば、水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

すると、原っぱはいいました。

「それなら空にお願いして、雨つぶを落としてくれたら、草をあげよう」

 

メンドリは、空に向かってお願いしました。

「ねえ、空さん、空さん、

お願い、雨つぶを落としてくださいな。原っぱに雨つぶが落ちれば、草をくれます。

その草を、雌牛さんに持っていけば、生クリームをくれ、

その生クリームを、ビールを作る親方に持っていけば、おいしいビールの粕をくれ、

そのおいしいビールの粕を、ブタさんに持っていけば、かたい毛をくれ、

そのかたい毛を、くつ屋さんに持っていけば、うわばきをくれ、

そのうわばきを、したて屋さんに持っていけば、スカーフをくれ、

そのスカーフを、泉さんに持っていけば、水をくれます。

その水を、わたしのオンドリさんに飲ませるの。

オンドリさんはむこうの林でひっくりかえって、

足は上をむいちゃってるの…

ああ、こわい!

死んじゃったらどうしよう、わたし、こわいわ!」

 

空は、林でひっくりかえっているオンドリをあわれに思って、原っぱに雨つぶを落としました。

すると、原っぱは草を、雌牛は生クリームを、ビールを作る親方はおいしいビールの粕を、ブタはかたい毛を、くつ屋はうわばきを、したて屋はスカーフを、泉は水をくれました。

メンドリは、くちばしで水をすくうと、林へ走り、オンドリに飲ませました。すると、どうでしょう。オンドリの、のどにつかえていたくるみの実が、するっと流れました。オンドリは、ひょいと起き上がって2本の足で立つと、バサバサッと羽ばたいて「コケコッコー!」とうれしそうに鳴きました。

それからというもの、オンドリは、けっしてよくばらずに、正直にメンドリとえさをわけるようになりましたとさ。

 

 

 

 

よくここまで、指示されたことをひたすら守れるなと思った。物物交換にしてはずいぶん長いなと思った。