内容
昔、ガリラヤに、心優しいラブ・ハニナ・ベン・ドサが妻と暮らしていた。
夫婦は貧しくて、粉がなくてパンも焼けないほど、暮らしに困っていた。
あるとき、妻が言った。
「こんなひもじい暮らしは、もう、うんざり!」
ハニナはため息をついて、妻をなぐさめようとした。
「といって、どうしたものか…。でも、われわれは正しく、清く、暮らしてきた。だから、来世ではずっと良い暮らしができるだろうよ」
「そうかもしれないけれど、でも、来世まで待つ元気はないし、がまんできそうもないわ」妻は言った。「ねぇ、心正しいものたちが来世でうける報いを、ひとつでいいから、いま、私たちにおあたえください、と神様にお願いしてみたらどうでしょう?」
「なるほど、それはいい考えだ」ハニナはいい、さっそく神に祈った。
祈りおわらぬうちに、天からハニナに、黄金の腕のようなものがさしのべられた。
「これは、なんです?」ハニナの妻は仰天した。
「黄金のテーブルの脚だ」ハニナは言った。「来世では、心正しいものたちは、黄金のテーブルで食事することになっている」
「なんてすばらしい!」妻は叫んだ。「すぐ願いをかなえてくださるなんて、神様のおきづかいのありがたいこと!この黄金の脚を金細工師に売れば、その代金で食べものや服が買えますね」
ハニナと妻は幸せな気分でベッドに入ると、たちまち寝入った。
ハニナは、夢を見た。ハニナと妻が黄金のテーブルで食事をしている夢だったーーーだが、テーブルがぐらぐら揺れている…。
テーブルがぐらつくとは、なんと奇妙なことだろう。ハニナは、なぜぐらつくのか、下をのぞきこんではっとした。まわりのほかのテーブルは全て3本の脚に支えられているのに、ハニナと妻のテーブルには脚が2本しかないなかったのだーーー。
ハニナは目を覚ますと妻を起こして、今 いま見た夢を話してきかせた。
「来世で食事をするテーブルが、ぐらついてもいいかね?脚が1本足りなくてテーブルが揺れていても?」
「いやです、とんでもない!」妻は言った。
「どうしよう?」ハニナは聞いた。
「脚をもとにもどしてください、とお願いしたらどうかしら?」妻はいった。
ラブ・ハニナ・ベン・ドサは祈った。神は祈りに応えて、黄金のテーブルの脚をとりあげられた。
願いを叶えてもらって良いことが起こるのは、前借りをしてるみたいなことなのか!
それはそれで神頼みするのが良いことなのかわからなくなってきたなー。