Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【日本の絵本】なまえのないねこ

ぼくは ねこ。なまえの ない ねこ。
だれにも なまえを つけてもらったことが ない。
ちいさいときは ただの 「こねこ」だった。
おおきくなってからは ただの「ねこ」だ。

まちの ねこたちは、みんな なまえを もっている。
くつやさんの ねこは、レオ。
「ぼくの なまえは ライオンという いみなんだぞ」
レオは いつも じまんしている。

ほんやさんの ねこは げんた。
げんたの げんは げんきの げんだって。
「げんちゃん こんにちは」
おきゃくさんが かならず こえを かけていく。
げんたは みせの にんきものだ。

やおやさんの ねこは チビ。
「いやあ、これでも むかしは ちいさかったんだけどね」
おおきな チビは ちょっぴり はずかしそう。

おそばやさんの ねこは つきみ。
パンやさんの なかよしコンビは ハイジと クララ。

きっさてんの ねこは なまえを ふたつも もっている。
おばさんは 「みみちゃん」と よぶし、
おじさんは 「しろまる」と よぶんだ。
どっちで よばれても 「にゃー」と おへんじ。

おてらの ねこの なまえは じゅげむ。
ながいきする えんぎのいい なまえ なんだって。

「いいな。ぼくも なまえ ほしいな」
「じぶんで つければ いいじゃない。
じぶんの すきな なまえをさ。
ねこ いっぴきぶんの なまえくらい、
さがせば きっと みつかるよ」

すきな なまえ。すきな なまえ。
まちを あるきながら ぼくは さがす。
かんばん。やじるし。くるま。じてんしゃ。ほんじつとくばい。ちゅうしゃきんし。
どれも ちがう。ちょっと ちがう。ぜんぜん ちがう。

「あらー、たろうくん。ひさしぶり」
「もこちゃん、げんき?」
いぬにも なまえが ある。
「この ダリアと ガーベラ、きれいね」
はなにも なまえが ある。

のらねこ。
きたないねこ。
へんなねこ。
そんなのは なまえじゃない。

こら!
あっちいけ!
しっしっ!
そんなのは なまえじゃない。


なかなか やまない あめ。
あめ、あめ、あめ。
こころの なかが あめの おとで いっぱいになる。

「ねえ、おなか すいてるの?」
あ、やさしい こえ。
いいにおい。

「きみ、きれいな メロンいろの めを しているね」

そうだ。
わかった。
ほしかったのは なまえじゃ ないんだ。

なまえを よんでくれる ひとなんだ。

「おいで、メロン」

 

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