Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【世界の深い知恵の話】うつくしい友情

内容

 

 ある町にとても美しい女性が住んでいました。このひとが通りかかると、誰もが目を留めました。誰もが彼女に話しかけたい、声を聞きたい、問いかけたい、いっしょにいたいと思いました。同じ町に貧しい娘が住んでいました。この娘もたいそううつくしかったのですが、ことらは身なりがみすぼらしく、誰も目を留めず、誰も関心を示しませんでした。娘の毎日はさびしく、悲しいものでした。娘はあでやかな装いの、そのうつくしい女性を遠くから見つめて、彼女に対する町の人びとの賛嘆の思いを感じました。あのひとに対する十分の一でもいい、町のひとたちがわたしに関心を示してくれたら―ーーそう娘は思いました。わたしはこの心のうちに、みんなと分かち合いたいものをたくさん持っている。でも誰もわたしの言うことを聞こうとしない。

 ある日のこと、貧しい娘は勇気をふるい起こしてうつくしい女性に話しかけました。

 「あのう・・・一つお願いがあるんですけれど、聞いていただけないでしょうか?」

 うつくしい女性は心の温かい、やさしい人でした。彼女は振り返って貧しい娘に笑顔で答えました。「もちろんよ。わたしにできることが何かあるのかしら?」

 「あなたはとてもうつくしい方ですし、すばらしい装いをしていらっしゃいます。それにひきかえてわたしは貧しく、粗末な服しか持っていません。ですから、この町のひとはわたしのことを気にも留めません。たった一日でいいのです。あなたのうつくしいケープの中にわたしをかくしていただけないでしょうか?人びとが足を止めてあなたを見つめるとき、わたし、あなたのケープの陰から町のひとたちに話しかけてみようと思うんです。とても大切なことーーー聞く価値のあることを、みんなに話してあげたいんです。それがどんなに大切か、知ってさえいたら、誰もがよろこんで耳を傾けるようなことを。」

うつくしい女性は貧しい娘の願いを聞き入れて、翌朝、貧しい娘に自分の見事なケープを着せかけ、町の通りをいっしょに歩きました。どこに行っても人びとはうつくしい女性に目を留め、彼女のケープに覆われて歩いている娘に心をひかれました。うつくしい女性は娘に話しかけて、その身の上について問い、娘の言うことに関心を示し、その賢さにおどろきました。こうしてその日から二人の間に深い友情が芽生え、別れて暮らす気になれないくらい、仲のいい友人となったのでした。

 ええ、今日も二人は連れだって、この世界の町筋をいっしょに歩いています。

 

 

 

 

美人は何日かで飽きると聞いたことがあるけれど、この美しい女性はなぜずっと人びとから気に留められるほど魅力があったのだろう?心が温かいから?

貧乏な娘は、人びとに話したい内容をどのように学んだのだろう?それをだれから教わり、人に伝えることが大切であると気づいたのだろう?

娘の話の中に賢いと思える内容があったということは、娘は話の中に、話したい内容を入れて興味関心を持ってもらえるような話し方ができているということなのだろうか。普段人と話す経験が少なくても、その話術をどのように鍛えたのかがとても気になる。

自分の言葉で大切なことを伝えられる力は誰でも身についているわけではないと思うし、それを聞いて理解できる相手もそれなりに深く考えている人だと思う。自分が大切だと思うことを受け入れて理解してくれて、一緒にいたいと思える人と出会えるのは、人生においてとても幸運なことだと思う。