Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【インドの古い話】金のハクチョウ

話に出てくる、ボーディサッタとは「のちに仏陀になるはずの人」という意味で、お釈迦様の前の世の姿のこと。

 

内容

むかしむかし、ブラフマダッタ王が、べレナスの都で国をおさめていたころのことです。ボーディサッタがバラモン僧に生まれてきたことがありました。そして、大きくなったとき、同じ階級のむすめと結婚して、ナンダー、ナンダヴァティースンダリナンダーという3人の女の子が生まれました。やがてバラモン僧が死んで、子どもたちとその母親は、よそのうちに引きとられました。

いっぽう、バラモン僧は金のハクチョウになって、またこの世に生まれかわってきましたが、このハクチョウはじぶんの前世のことを思い出す力をさずかっていました。ハクチョウは大きくなると、金色の羽におおわれた、美しい姿になりました。

そしてある日、じぶんの大きなからだをながめていますと、じぶんが前の世で人間だったことを思いだしました。それから、(むかしの妻やむすめがどうして暮らしているだろう。)と思いました。そして妻たちはほかの人に使われてやっとのことで暮らしていることがわかりました。そこでハクチョウは、金でできているじぶんの羽をながめ、この羽を1本ずつ、つぎつぎにやったら、妻やむすめを安楽に暮らさせることができるだろうと思いました。それで、妻やむすめの住んでいるところへ飛んでいって、屋根のてっぺんにとまりました。それを見たバラモン僧の妻やむすめは、

「あなたはどこから来たのですか?」と、たずねました。ハクチョウになったボーディサッタのバラモン僧は、

「わたしはおまえたちの死んだ父親で、金のハクチョウに生まれかわったのだが、おまえたちにあいにきたのだ。もうこれからは、おまえたちが人にやとわれて、苦労をしないですむようにしてやりたいと思って、やってきたのだ。」と、言いました。

「おまえたちに、わたしの羽を1本ずつ、つぎつぎにあげることにしよう。これを売れば、おまえたちが安楽に暮らせるくらいの金にはなるだろう。」

そう言って、ハクチョウはじぶんの羽を1本やって、帰っていきました。それからときどきやってきては、また1本ずつ羽をくれましたので、それを売ったお金で、母親とむすめは財産もできて、しあわせに暮らすようになりました。

ところがある日、母親がむすめに言いました。

「動物というものは、あんまりあてにならないものだよ。あのおとうさんだって、そのうち、ふいっとどこかへいって、それっきり帰ってこないともかぎらないさ。こんど、あの鳥がやって来たら、すっかりはね毛をむしって、全部わたしたちのものにしてしまおうじゃないか。」

むすめたちは、「そんなことをしては、おとうさんがかわいそうだから、いやです。」と、言いました。けれど欲のふかい母親は、ある日、金色のハクチョウがやってくると、「こっちへおいで。」とよびよせて、両手でつかまえて、羽をむしりとってしまいました。ところが、むりにむしりとると、ハクチョウになったボーディサッタの羽は、金ではなくなって、ただのツルの羽のようになってしまいました。かわいそうにハクチョウはもういくら羽をひろげても、飛ぶことができなくなりました。そこでバラモン僧の妻は、鳥を大きなかめの中につっこんで、飼っておきました。だんだんに時がたつと、ハクチョウの羽はもとのように生えそろいました。けれどもこんどのは、ふつうの白い羽でした。そしてつばさがもとのようになると、ハクチョウは自分の家へ飛んでかえって、2度ともう、もどっては来ませんでした。

 

一気に得を得ようとすると、大きな損をする

ほどほどにしておかないで、無理に限界までむしりとろうとすれば、得はできないようになっている。自分の生活に足りる程度までの得を得たら、欲張りすぎない。

自分だけ欲張ろうとすると、あとで後悔するのは自分。欲張った分のことは自分に返ってくると思っていた方が良い。