内容
ある村に美しい家が建っていました。
「あなたの家はとても素敵ですね。」という隣人の言葉に、家の主人の男は気分が良くなります。他の隣人はこう言いました。
「庭を美しく管理したらどうですか?きっと私たちの村で一番美しい家になるでしょう。」
その言葉を聞いた主人は心が動きました。「そうか。そうしよう!」
その日の夜、主人は美しい庭を作り、村一番の家にするために夜も眠らずに悩みました。
次の日の朝になると、山に登り、花や木の苗を取ってきました。そして自分の家に植えました。
次の日は村の草原に行って草花を取ってきて、自分の家に植えました。
主人の庭は日ごとに美しくなっていきました。村の池から魚を取ってきて、池を作り、山から鳥を捕まえてきて庭に住まわせました。
主人は自分の庭を見ながら大満足でした。そのとき主人の目には「大きな石」が見えました。「どうしてこんな所に石があるのだろう?我が家の庭には似合わない。どこか別の場所に移そう。」
そう思っていろんな場所に置いてみますが、どれも気に入りません。そこで門の外に大きな石を捨てました。
その姿を見ていたある老人が声をかけました。「あなたはなぜ道端に石を捨てるのですか?」
「私の庭には似合わないからです。」主人がそう答えると、老人顔が歪みました。そして怒りながらこう言いました。
「あなたが必要ないからといって、たくさんの人が歩く場所に石を捨てたらダメじゃないか!」
主人は老人の言葉を無視して門を閉めて家に入っていきました。
「自分のことしか考えない奴だ。まったく・・・」と老人はそうつぶやいてその場を去りました。
次の日、庭を完成させた主人は村の人たちを招待しました。たくさんの人に自分の庭をほめてもらい、とても気分が良くなりました。
歳月が経ち、主人は老人になりました。ある日息子が訪ねてきてこう言いました。
「お父さん、私の家で一緒に住みましょう。年老いた老人が1人でいるのは大変でしょう。」
主人は自分の家を離れるのが名残惜しかったのですが、息子夫婦と孫たちと暮らすのも悪くないなと思いました。結局引っ越しをすることになりました。
引っ越しの前日、たくさんの愛情をこめた庭とお別れをしながらこう言いました。
「新しい主人が来て、お前たちをまた管理してくれるだろう。」
門の外に出ると数十年前に捨てた石が目につきました。
「あのときの石はまだここにあったんだな。」当時老人に言われた言葉も思い出しました。「今から考えても、この石は我が家の庭には似合わない。」そう思いました。
引っ越しの日息子たちが荷物を積んでいる間、主人は庭に座って涙を流していました。「もう、この庭ともお別れか・・・」
荷物が積まれて、出発の準備ができました。主人もゆっくり家を後にします。そして、いよいよ門を出て出発というときに、あの石につまずいて転んでしまいました。
「あー、私が捨てた石ゆえにこうなってしまったんだな・・・」
と主人は後悔しました。
自分でしたことは、後々自分に返ってくる
捨てたつもりになっていても、自分の見えないところに置いた(隠した)としてもいつか自分の元にまたあらわれる。完全になくなるわけではない。