Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【タルムード】まっとうな答え

内容

きびしい寒さのつづく、冬のある日のことだった。ブドウ酒で心地よくなった王さまは、もっとも信頼している側近に声をかけた。

「この国は、いま寒波に襲われている。この雪と寒さを人民がどのようにしのいでいるか、見てまわろうではないか」

「町の通りには人っ子ひとり、生きものの影ひとつないに決まっています。大寒波が襲来しているんですから」側近はいった。

「ともかく、馬車にストーブをつんで出かけよう」王さまはいった。

馬車を走らせたが、通りには人影ひとつ見当たらない。それでも王さまと側近は、町角で馬車をおりて、ストーブを置いた。しばらくすると、人が近づいてくる気配がする。王さまは声をかけた。

「だれだ?」

ユダヤ人です」と、答えが返ってきた。見れば、身にまとっているのは薄手のボロで、それさえ破れている。

「寒くはないのか?」王さまは聞いた。「わたしはあたたかい服をたくさん着こんでいるが、それでも寒い。おまえはたいして着てもいないし、しかもボロで破れている。さぞ、寒かろうに」

「服が破れておりますので、片っぽの穴から入った風が、もう片っぽの穴から抜けていってしまいます。あなたさまはたくさん着込んでおいでだから、風が入っても出口がないのでしょう」と、ユダヤ人はいった。

王さまは笑って、ユダヤ人にいった。

「こっちに来て、ストーブにあたるがいい」

それから、王さまは内隠しから財布を出し、なかの金をきっちり半分に分けてから、ユダヤ人にいった。

「わたしの質問に正しく答えたら、このふたつに分けた金を半分やろう」

ユダヤ人はいった。「どうぞ、おたずねください」

「われら人類の祖先アブラハムの母親は、なんという名だったか?」

「『タルムード』によると、アムティライ・バッド・カルナボです」ユダヤ人は即答した。

「みごとだ!この半分はお前のものだ」王様はいった。

そこで、ユダヤ人はいった。

「それでは、おゆるしいただいて、今度はわたしに質問させてください。その質問にまっとうにお答えになったら、頂戴したこのお金はお返ししますが、そうでなかったら、もう半分のお金もください」

「たずねるがいい」王さまはいった。

ユダヤ人は口を開いた。

「あなたさまは2000年も前のことをおたずねになり、わたしは答えました。わたしは、たった4ヶ月前にあったことをおたずねいたします」

「よかろう」王さまはいった。

「わたしの母は4ヶ月前に亡くなりました。母はなんという名だったでしょう?」

王さまは、ワッハッハッと大笑いしていった。

「残りの金も持っていくがいい」

ユダヤ人は金を全部受けとって、意気揚々と家路についたのだった。

 

 

賢いなーと思う。それだけ日頃から知識をつけていて、パッと答えられるのは日頃からじっくり考えていて、人と話している内容だからなんだろうな。ただ頭の中にあるだけのことが肝心なときにすぐに口にできるとは限らないからなー。