Actions speak louder than words.

行動は言葉よりも雄弁

【タルムード】鳥の助言

内容

 

ある国の王女が鳥を飼っていた。その鳥は、訓練すれば人間のことばをしゃべることができたので、王女は鳥を自分の命のように大切にしてかわいがり、毎朝のように、鳥かごのそばで冗談を言いあって楽しんだ。だが、鳥は、王女とのおしゃべりなんて、なんの役にも立たない、だれか鳥かごからだしくれないものか、どうしたら逃げだせるだろうか、と切なく思いめぐらしていた。

ある日、海のむこうの国に香水を買いにいくよう、王女が召使いに命じているのを鳥は聞きつけて、その召使いを呼んで頼んだ。

「どうかお願いです。旅先でわたしに似た鳥を見かけたら、それはきっと、わたしの仲間です。どうか、仲間によろしく伝えてください。そして、わたしはかごのなかに囚われていると伝えてください。飛ぶことができなければ、ぜいたくな食べものをあたえられてもなんの意味もないと」

「あなたの願いどおりにしましょう」召使いはいた。

召使いは、海のむこうの国に出かけていった。

ある日その国で、召使いは、王女の鳥によく似た鳥が群れをなして飛んでいるのを見かけた。召使いは鳥の願いを思いだし、群れにむかって叫んで、王女の鳥のことばを伝えた。

召使いのことばが群れにとどくと、いきなり、群れのなかの一羽が召使いの胸に落ちてきた。召使いはよろこんでかかえた。だが、鳥はカサとも動かない。死んでいるのか、声も立てず、まばたきもせず、尾羽もふらない。召使いは腹を立てて、鳥を地面に投げ捨てた。

と、そのとたんに、投げ捨てられた鳥が、大きく羽を広げて空高く飛びたった。なにがなんだかわけがわからず、召使いはその場にへたりこんだ。

召使いが王宮に帰ってくると、鳥はたずねた。

「わたしの仲間に伝えてくださいとお願いしたことは、どうでしたか?」

召使いはあのときの腹立ちを思いだしながら、「わたしが味わった無念さを思いださせないでほしいものです。じつは、こんなことがありました」といって、鳥の群れを見かけたときのことを話した。鳥は召使いの話がまるきり理解できないというふうに、押し黙っていた。

しばらくして、王女が鳥とおしゃべりをしにやってきた。が、鳥は死んでしまったように動かなかった。王女はひどく腹を立てた。

「お前が死なせたのね!」王女は召使いを𠮟りつけ、鳥を捨てるように命じた。

捨てられたとたん、鳥はパタパタッと羽を広げて、空高く舞いあがった。そしてもう、もどってこなかった。

召使いはやっと、旅先で会った鳥がしたことの意味がわかった。そう、あの鳥は囚われの鳥に、「死んだふり」をして逃げれば助かる、と教えたのだった。

 

 

 

賢い鳥だなあ。召使いは言われた通りのことを何の疑いをもたずに伝えるところが良いような悪いような。自分の考えを持たずに行動すると、こうなるということがわかるな。